こんにちは、てつやまです。
このたび、大山誠一郎さんのミステリー小説『ワトソン力』を読みました。
《作品情報》
・書名 ワトソン力
・著者 大山誠一郎
・出版社 光文社
・頁数 264
1.この本のここが凄い!
主人公が鋭い推理をするのではなく、
【周りの推理力を向上させる】!?
シャーロック・ホームズの相棒である【ワトソン】の役割!?
一風変わったミステリー。
なぜこの本を読んだのか?
設定がとても面白い!
主人公が推理をするのではなく、【周りの推理力を向上させる】チカラというのは、
目新しいと感じました。
さらに、そのチカラを、創作上の名探偵・シャーロック・ホームズの相棒である、
ワトソン医師の名前にあやかり【ワトソン力(りょく)】と名付けるネーミングセンスも、
読書欲が刺激されました。
2.かんたんあらすじ
警視庁捜査一課の和戸(わと)には、一風変わった能力がある。
それは、「周りの推理力を飛躍的に向上するチカラ」!?
このチカラ=【ワトソン力(りょく)】で難事件をスパッと解決!
各章のカンタンまとめ
プロローグ
→和戸監禁される。恨まれる覚えを探る。
第1話【赤い十字架】
→十字架5つの血文字は、ダイイングメッセージ?
第2話【暗黒室の殺人】
→道路陥没で、暗闇の中、撲殺。何故このタイミングで?
第3話【求婚者と毒殺者】
→花婿選びに、和戸参戦!?誰が毒をグラスに入れた?
インタールードⅠ
→監禁犯の目的は、〈ワトソン力〉!?
第4話【雪の日の魔術】
→和戸奥多摩お巡りさん時代。雪足跡の不可解密室
インタールードⅡ
→〈ワトソン力〉で真相を解き明かした人物の中に監禁犯が!?
第5話【雲の上の死】
→飛行機内で殺された理由は?〈ワトソン力〉の効果範囲
第6話【探偵台本】
→作中作。火事で燃やされた台本。勘違いしていることは何?
第7話【不運な犯人】
→バスジャック中のバス内で死体発見。不運だったのは誰?
エピローグ
→監禁犯はだれだったのか…
心に響いたフレーズ
捜査一課員として関わった事件の中で恨まれる覚えはないが、クローズドサークル状況下での事件のどれかで恨みを買っている可能性はないだろうか。
↓
冒頭、何者かに監禁される主人公・和戸。
何故自分が監禁されなければならないのか?
監禁犯人の目星をつけるため、自分を恨む人間を検討する。
捜査一課員としてならば、目立たない和戸は、犯人に恨まれる可能性は低い。
ならば、非番の際に巻き込まれた事件で、
知らずに目を付けられた可能性はないだろうか…
こうして、和戸が過去、巻き込まれた事件への回想に移ります。
複数の短編が、一本の長編となるための、理由付けが自然で美しい!
冒頭における、和戸のこの推測のおかげで、その後の短編にすんなり入っていけました。
監禁犯は誰なのか。ワトソン力のことを知っているということは、監禁犯は、以前、ワトソン力の影響を受けたことがある人間だ。そのときかつてないほど推理力が高まった経験から、何らかの特殊な力が自分に働いたのだと悟ったのだろう。
~(中略)~
ワトソン力は、推理力を向上させるものであって、推理の結果の正しさを保証するものではない。向上した推理力で間違った結論を出す可能性もある。
~(中略)~
監禁犯が、ワトソン力の影響を受けたら正しく推理できると考えているのは、かつて正しく推理して真相を見破った経験があるからではないか。だから今度も、正しく推理できると信じたのではないか。つまり、監禁犯は、最終的な推理をして事件を解決した人物だったことになる。
↓
和戸の推理が、徐々に確信に迫る様子にドキドキ!
なぜ自分が監禁されたのか?
それはワトソン力のせい?
ワトソン力の影響を受けた人物の犯行?
ワトソン力は推理力を向上させるだけで、真実を言い当てられる訳ではない。
なのにリスクを冒してまで現職警官を監禁したのはなぜか?
それは、この力が、万能だと確信しているから?
なぜ確信しているのか。
それは過去、ワトソン力の影響で推理し、真相にたどり着いていたから?
つまり、過去の事件で真相を言い当てた人物が、今回の監禁犯?
ひとつひとつロジックを積み重ねるようで、読み進める手が止まりませんでした!
3.まとめ
読んだことで得られたポイント
「主人公が推理して謎を解く」
その固定概念が揺さぶられるワクワク感。
「主人公が直接謎を解かず、周りの推理力を向上させる」
その設定がとても目新しく魅力的なものでした!
事件に巻き込まれがちな主人公の性質としては、とても適切な特殊能力だと感じました!
この作品は
・大山誠一郎さんの作品が好きな人
・一風変わった推理合戦を堪能したい人
・ロジックを積み重ねる作品が好きな人
におすすめな一冊です!
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