
こんにちは、てつやまです。
このたび、小西マサテルさんのミステリ小説
『名探偵じゃなくても』を読みました。
《作品情報》
・書名 名探偵じゃなくても
・著者 小西マサテル
・出版社 宝島社
・頁数 314
1.この本のここが凄い!
『このミステリーがすごい!』第21回大賞作品『名探偵のままでいて』のシリーズ第2作品。
元校長の祖父と孫娘・楓の物語。
楓の身の回りで見聞きする「不思議なこと」を、祖父が【安楽椅子探偵】のごとく推理する。
頭脳明晰な祖父。しかし彼は認知症を患っており…
認知症×ミステリという異色な骨太ミステリ。

なぜこの本を読んだのか
前作『名探偵のままでいて』が面白かったからです。
【安楽椅子探偵】モノ。
現場に訪れず、聞いた話から推理するという、頭脳明晰さが求められる探偵。
それが、元校長先生という、人生の酸いも甘いも噛みしめた人物像で、根拠づけられています。
なおかつ、その人物は幻視などを起こす【認知症】を患っており…
設定に惹かれ、シリーズ第2作品目を楽しみにしていました。
2.かんたんあらすじ
クリスマス直前、居酒屋で〝サンタクロース消失事件〟について議論していた楓たちは、
紳士然とした男性・我妻に声をかけられた。
彼は、かつて小学校の校長を務めていた楓の祖父の教え子なのだという――。
〝連続自殺未遂事件〟や〝泣いている死体〟など、楓や我妻が持ち込む不可解な謎を、
レビー小体型認知症の祖父が名探偵のごとく解決する。
しかし、その症状は一進一退を繰り返しており……。
心に響いたフレーズ
祖父がいうように、世の中のすべての出来事は、【物語】なのだ~世の中の出来事は、そのすべてが物語ーそして物語とはハッピーエンドであるべきで、そう思い込むべきだというのが祖父の口癖だ。
主人公、孫娘・楓の独白。
楓には、過去に「とある辛い経験」あり。
それが、少しずつ上向いているのは、祖父のおかげもあります。
世の中の出来事、人が関わろうと無かろうと、すべてが物語。
その物語は、バンドエンドだと考えると、生きるのがしんどくなります。
だからこそ、ハッピーエンドであるべき、と考えているのかと感じた。
推理に入ると、まるで魔法のように震えがぴたりと止まっていたのに。
孫娘の楓が、祖父の様子を心配する描写。
認知症の症状か?唯一?といえる肉親の、衰えている姿を見るのは、とても辛いこと。
いずれは四六時中、孫である自分のことがわからなくなるという恐れ。
認知症×ミステリの特殊性、特異性を、うまく表している描写だと感じました。
おじいちゃん。名探偵じゃなくていい。何があったって尊敬してる。何があったって、大好きだよ。
孫娘、楓のモノローグ。
タイトルの伏線回収「名探偵じゃなくても」
前作「名探偵のままでいて」は、認知症の症状が進む祖父に、頭脳明晰なままで居て欲しい、
という気持ちが強かったです。
今作「名探偵じゃなくても」では、そんな症状が進む祖父でも、変わらず尊敬する人物だと、
改めて祖父が大好きだと認識した、と感じました。
次回作があれば、どういうタイトルになるか、要注目です。
3.まとめ
読んだことで得られたポイント
主人公の祖父の考え方に、心がウキウキと弾みました。
「すべての出来事が物語の一部」だと感じることで、
少しでもポジティブな視点が持てる。
だから、ハッピーエンドを信じて生きようって気持ちになれるんだなと感じました。
また、家族の大切さを再認識しました。
認知症の祖父とその孫の絆を通じて、どんな状況でも、家族の愛と尊敬は深まるのだなと思いました。
この本は
・前作『名探偵のままでいて』を面白いと感じた人
・ほっこりするミステリが読みたい人
・人生経験豊富な探偵が好きな人
におすすめな作品です!
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