『実家暮らしのホームズ』加藤鉄児/「引きこもり=弱さ」ではなく、強さの一部だと知る

てつやま
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こんにちは、てつやまです。

このたび、加藤鉄児さんのミステリー小説

『実家暮らしのホームズ』を読みました。

《作品情報》

・書名  実家暮らしのホームズ

・著者  加藤鉄児

・出版社 宝島社

・頁数  278

1.この本のここが凄い!

この名探偵、実家暮らしのひきこもり!?

【名探偵主人公】の属性は数多く存在します。

祖父が名探偵だったり、薬で子どもの姿にされてしまったり、執事だったり、ルポライターだったり、弁護士だったり…

今回はなんと【ひきこもり】!?

「家から出たくない」

そのモチベーションにより、現場に行くのは必要最低限。

この設定こそ、究極の【安楽椅子探偵】!?

なぜこの本を読んだのか

「このミステリーがすごい大賞」受賞作家の本。

そして、ホームズという単語に「実家暮らし」というワードがくっついているタイトルに興味をひかれたため、読んでみました。

2.かんたんあらすじ

【登場人物】

・判治リヒト(24)…柏市郊外の実家暮らし。ずる賢いホームズ。和美に頭が上がらない。

・ホルツマン・ユキ(?)…オリバー・オコンネル財団職員。オリバーの手足となってリヒトに接触。

・判治和美(48)…自宅でピアノ教室を開き、女手一つで無職の一人息子を養っている。リヒトを溺愛。

・矢野(?)…柏みなみ署捜査一課刑事。良くも悪くも正直な人物。

かんたんあらすじ

ミステリーマニアの資産家が開催した、世界規模の推理クイズ大会「眠れる探偵プロジェクト」

その予選で、最高得点をたたき出し、3万ドルを騙し取った男、判治リヒト。

彼は、実家暮らしの引きこもりだった!?

居場所を突き止められた彼は、代償として、「探偵」として様々な事件を解くことを求められ…

各章・かんたんあらすじ

Case1「8ビットの遺言」

ミステリーマニアの大富豪オリバーの親友・城ノ戸が殺された事件。

死体は左手小指に歯型があり、被害者自身が噛んでいた?

被害者は、どんなダイイングメッセージを残したのか?

Case2「自殺予告配信」

「いまから24時間後に、ぼくは命を断つつもりです」

動画配信で自殺予告した青年はどこにいる?

見つけてほしくて残した手掛かりをもとに、居場所を特定せよ!

Case3「撲殺モラトリアム」

資産家の父親を殺したと自首した次女。

しかし、事件に違和感を覚える刑事・矢野。

彼は個人的に、リヒトへ依頼。

果たして事件はどのような姿をみせるのか!?

Case4「零下二十五度の石棺」

冷凍倉庫の中で死体が発見。

倉庫は密室状態だった…

「氷も解けない」ほどの氷点下での密室殺人の真相とは?

Case5「ダイムの遺言」

Case1「8ビットの遺言」で殺された城ノ戸から、オリバー宛に手紙が届く。

その手紙の中には、暗号と、認知できなかった娘のことが書かれていた?

暗号を解きつつ、親子の謎も解きほぐしていく。

心に響いたフレーズ

「ニューヨークには絶対いきたくなかった。というか、ほかのどこだろうがいきたくなかった。この家から出たくなかったんだよね。外出、大嫌い」

判治リヒトのセリフ。

「実家暮らし」ではなく、「引きこもり」の方が、タイトルとして適切ではないかと感じた箇所。

自己中心的な独裁者の性格をわかりやすく表現しています。

また、実家からでたことのない、幼い部分もにじみ出ていて、とても面白い場面です。

そう考えると…確かに「実家暮らし」という表現でも、本書タイトルとして適切なのかも…

「そうだ。これはパリティーー絶対に六面を揃えることができない、つまり解答が存在しないルービックキューブなんだ」

現場で見つけたヒント「ルービックキューブ」についてのリヒトのセリフ。

「パリティ」という言葉を初めて知り、とても興味深かったです。

解答が存在しない、もしくは、2つ以上解答が存在してパズルの体をなさない。

たとえば、クイズ作家など、基本的に、回答は一つで作問しています。

そして、ミステリー小説も、証拠やらアリバイやら動機やらで、
犯人を、基本的に一人に絞ることができるようにしています。

そんな書籍に触れてきた私としては、「パリティ」という概念はとても不思議。

3.まとめ

読んだことで得られたポイント

物語の語り部が推理するのではなく、その語り部から見た探偵が推理する形式は、
まさしく「名探偵シャーロック・ホームズと助手ワトソン医師」の関係性だと感じました。

今回のホームズである「判治リヒト」は、とびぬけた思考力を持つ一方で、性格がひねくれていて子供っぽい印象です。

実家暮らしという点も、性格の一因になっていそうですが、ただ一人の親である和美には頭が上がらないという設定は、とても親近感が湧きました。

この本は

・忙しい中でミステリーを読みたい人

・自信満々な探偵が謎を解く話が好きな人

・母親に頭があがらない主人公が好きな人

におすすめな作品です!

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