
こんにちは、てつやまです。
このたび、大崎梢さんのハートフルミステリ小説
『本バスめぐりん。』を読みました。
《作品情報》
・書名 本バスめぐりん。
・著者 大崎梢
・出版社 (株)東京創元社
・頁数 285
1.この本のここが凄い!
移動図書館「本バスめぐりん。」で働く主人公たちが、
日常の謎を解くコージーミステリ。
本に詳しくないおじさん主人公と、20代司書女性との凸凹コンビ。
図書館になじみのない読者でも、主人公の成長と共に、図書館のことが詳しくなる!
なぜこの本を読んだのか
「図書館が好きだから」に集約されます笑
読書欲を満たしてくれる有難い存在、図書館。
そんな図書館の一事業、「移動図書館」をテーマにした小説。
さらに、日常の謎を解くミステリも合わさっていると知り、読みたくなった。
2.かんたんあらすじ
都会を駆ける移動図書館「本バスめぐりん」。
そこには、初老の新人運転手・テルさんと、エネルギッシュな図書館司書・ウメちゃんがいる。
40歳の年の差がありながら、息の合ったこの凸凹コンビが、
団地や公園、ビジネス街を巡り、訪れる場所ごとに待っているのは、
多彩な利用者たちと解決を待つちょっとした謎の数々。
本好きなら思わず心が温まる、ほっこりハートフルミステリー。
心に響いたフレーズ
「言葉の意味としては『居心地の良い』『くつろいだ』なので、お菓子屋さんもそれを意図しているんでしょうが、私が言っているのは本のジャンルです。ご近所で起きた事件や不思議な出来事を、おばあちゃんや家政婦さん、町中のコックさんといった一般の人たちが探偵役となり解決していく、ほのぼのタッチの小説なんですよ」
「コージーミステリ」についての、司書・梅園菜緒子の解説。
本に詳しくない主人公・照岡久志(60代男性)に、
司書の梅園菜緒子(20代女性)が説明する場面。
世代の違う、先輩後輩の関係で解説しているため、
なじみのない読者にも、丁寧に教えてくれる名シーンです。
「ここには写っていないんですよ」
移動図書館「本バスめぐりん。」
バスの中に積まれた本を、点在する場所までいき、貸出の対応をするサービス。
そんななか、
「自分と同じ本を、先に借りる、なぞの人物」
に興味をもった、一人暮らしのご夫人がいました。
ある日、彼女は、借りた本に写真が挟まっていたことに気づきます。
幸せそうな家族写真。
彼女は、「先に借りるなぞの人物」に、
自分と趣味趣向が似ていたため、親近感を覚えていました。
しかし、自らの孤独な生活と、その幸せそうな家族写真を比較し、
その違いに愕然として、もやもやしてしまい…
魔が差して、写真を隠してしまいます。
しかし、罪悪感に苛まれ、移動図書館の二人に写真を返却。
その後、いろいろな経緯のもと、主人公テルさんは、写真の持ち主にたどり着きます。
そして、テルさんから一人暮らしのご夫人へのセリフ
「この(写真の)中の誰が、栞代わりに写真を挟んだ人だと思いますか?」
ご夫人は、次々に指を指すも、「違いますよ」と言われ続けてしまい…?
その後の、テルさんの一言。
その結末に、「そうだったんだ」という驚きを覚えました。
「話しかけるって、勇気がいるよね。自分の考えていることを伝えるのは、だいたいいつもむずかしい。黙っている方がらくなときもある。でも話してよかったと思えることもたくさんあるよ」
テルさんが、ウメちゃんに言ったセリフ。
猪突猛進なウメちゃん。
自分の何気ない言葉で、相手を傷つけてしまうのではないかと、不安に思っていました。
そんなウメちゃんに、テルさんが語りかけたセリフです。
相手の苦悩、過去の結果を受け止めながら、それでも、良いこともあったことを伝える。
アドバイス、というよりも、ウメちゃんに寄り添った、
優しい言葉だと感じました。
3.まとめ
読んだことで得られたポイント
この本から、移動図書館の重要性について、考えるきっかけをもらいました。
「移動図書館」。
それは、図書館を利用しにくい人たちへの公共サービス。
公共サービスは、利用者の満足度や利用者数で、
続けるかやめるかが決まることが多いですが、図書館も同じ。
しかし、利用者が少なくても、その人たちにとって大事なサービスであれば、
続けるかどうか考える必要があるはずです。
この本を読んで、移動図書館の大切さや、公共サービスの難しさについて考えるきっかけになりました。
また、少人数でも必要としている人々へのサービスの重要性を再認識しました。
この本は
・図書館を利用したことがある人
・コージーミステリが好きな人
・コミュニケーションに悩む人
におすすめな作品です!
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