『杉森くんを殺すには』長谷川まりる/「依存」と「自立」の境界線が学べる

てつやま
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こんにちは、てつやまです。

このたび、長谷川まりるさんの青春小説

『杉森くんを殺すには』を読みました。

《作品情報》

・書名  杉森くんを殺すには

・著者  長谷川まりる

・出版社 株式会社 くもん出版

・頁数  203

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1.この本のここが凄い!

「杉森くんを殺す」に隠された意味とは!?

高校生ヒロの決意が、彼女自身の、人間関係への葛藤と、心の痛みを深く掘り下げる…

ヒロの心の変化と、その過程にある繊細な描写を見逃すな!!

なぜこの本を読んだのか

「第62回 野間児童文芸賞を受賞!」という紹介文と、タイトルの強さに心を惹かれて読んでみました。

2.かんたんあらすじ

主人公の高校一年生ヒロは、友人の杉森くんを殺す決意をする。

そのことを、義兄のミトさんに相談。

ミトさんはヒロに、

①やり残したことを片付け

②杉森くんを殺す理由をまとめる

ように助言。

ヒロは、その助言を実行しようとするのだが…

人々との関わりを通して、傷ついた心を取り戻す過程を描いたヒューマン作品。

心に響いたフレーズ

だから、自傷は止めちゃいけないけれど、放っておいてもいいわけじゃない。自傷という「時間稼ぎ」をしているうちに、心の傷を癒す方法を探す。これが正しい「対応」。

リストカット、自傷行為への正しい対応策について解説している、とても大事な箇所。

相手に踏み込みすぎず、かといって拒絶 せず。

そのバランス感覚が一番難しいのですが、そのバランスを取るという気持ちがとても重要。

私自身、無意識に、自分の価値観を相手に押し付けてしまいがちだと自覚しています。

だからこそ、距離を取って「自分が何ができるか」を考えることを大切にしています。

この箇所を読み、「バランス」というものに再度向き合う機会を貰いました。

「距離感を取るというのは、沈んでいる人から目を背けて、島を降りて海に出て行くという意味じゃない。湖の底が見える場所と、湖にすべりおちてしまわない、ちょうどギリギリのところでふんばっていなくちゃいけないんだ」

ヒロの義兄、ミトさんの「トラウマ島」という話。

ドーナツ状の島、ドーナツの真ん中が深い湖で、トラウマを抱えた人はその湖の底で沈みそうになっている。

トラウマ島はそり立っていて、内側に湖があることさえ気づかない。

湖の底に沈む人を助けるためには、トラウマ島を登っていかなきゃいけない。

しかし、トラウマ島のてっぺんより湖側に少しでも近づきすぎると、あっという間に足を滑らせて助けようとした人まで一緒に湖の底に沈んでしまう。

このたとえ話は、

「精神的に苦しんでいる人とどういう付き合い方をするか」

という教訓めいた例え話だと感じました。

そして、ミトさんなりの考え方が、このセリフにこめられています。

踏み込みすぎない距離感。

この場合の距離を取るとは、沈んでいる人から目を背けて逃げるということではない、と彼は話します。

極端な思考だと「助けるか逃げるか」の二択になってしまいますが、

「自分自身をも守る」というのが救助の鉄則。

「距離感を保つということは、逃げるということではない」

そのことを強く、読者に訴えかける場面だと感じました。

「人って、一か所だけに執着してたら、依存なんだって」~「でもね。いっぱい依存先をもって、あちこちに相談できてたら、それは自立って言うんだって」

ヒロの友達、良子さんのセリフ。

彼女が語った自立の定義は、とても分かりやすく、胸にスッと溶け込んだ感覚がしました。

自立とは、自分で何もかも背負うことではなく、

困った時には「助けて」と言える人や場所をたくさん持っていること、

それで人生のバランスを取ることができること。

私自身振り返ってみると、悩みを相談できる相手というのは、多くて1人もしくは2人ぐらいしかいないなと感じました。

相談する相手(人間)を増やすことが難しいならば、公共施設や独立行政法人など、

たとえば、「いのちの電話」や「こころの健康相談統一ダイヤル」、「24時間子どもSOSダイヤル」などの「相談できる場所」を、これから増やしていきたいなと感じました。

3.まとめ

読んだことで得られたポイント

この本を読んで、人との関係や心の距離感について深く考えさせられました。

主人公のヒロは、誰にも縛られないミトさんに憧れながらも、嫌われたくないという気持ちを抱えている高校生。

杉森くんとの関係の中で、好きだからこそ傷つけてしまう複雑な感情が描かれています。

そして、LINEブロック=絶交」という表現には、青少年たちの、「つながり」の重さが込められていると感じました。

自傷や依存、自立の話もとてもリアルで、「踏み込みすぎない距離」が必要だと学びました。

この作品から得られたのは、「人を思いやること」「自分を守ること」の両立の大切さです。

この本は

・自分の感情に名前をつけられない人

・“正しさ”に縛られて、自分を責めがちな完璧主義の人

・誰かを助けたいけど、どう距離を取ればいいか悩んでる人

におすすめな作品です!

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