
こんにちは、てつやまです。
このたび、EDAさんの異世界料理小説
『異世界料理道⑥』を読みました。
《作品情報》
・書名 異世界料理道⑥
・著者 EDA
・出版社 株式会社ホビージャパン
・頁数 301
1.この本のここが凄い!
「異世界×料理」というのは、珍しいものではありません。
しかし、本作品が他の料理ファンタジー小説と違うのは、「チート」が全くないこと!
一つ一つ、異世界の食材と、見知った現代の食材を照らし合わせ、試行錯誤で料理していく。
そうして、料理を通じて、人と人の縁を紡ぐところが、ハートフル!
なぜこの本を読んだのか
他作品よりも、リアルに描かれた異世界料理小説だったから読み進めました。
没入しながら読むことができ、主人公とともに成長できる作品。
2.かんたんあらすじ
異世界に迷い込んだ少年が、料理の腕で、森辺の民と呼ばれる狩人の部族たちとの縁を結んでいく話。
6巻は、異世界の森辺、族長筋の闇編。
心に響いたフレーズ
「貴方は、危険だ。たぶん、あのカミュア=ヨシュという石の都の人間よりもー異国人でありながら森辺の行く末を内側から動かす力を持った貴方こそが、俺には最も危険な人間に見えてしまう」
ルウ家の長兄、ジザ=ルウのセリフ。
森辺の民としてふるまう、異国人(異世界人)アスタ。
そんなアスタが動くたびに、森辺の民たちすらも動かされている、
そのことに危険を感じているセリフ。
確かに、ジザ=ルウの視点では、
突然現れた町の人間が、内側から森辺の民の秩序を変えていっている
ように見えます。
秩序を重んじる彼にとって、秩序を変えること自体、由々しき事。
それが、森辺の民ならぬ異国人のせいで変わってしまうという恐怖は、
とても大きいのだろうと感じました。
「それは……きっと、すべての毒をスン家だけで引き受けてきたからじゃないかしら……?」
スン家の長姉、ヤミル=スンのセリフ。
清廉で誇り高く生きる森辺の民の中で、異質なスン家。
そんなスン家の異様さに、憤りと恐れをはらんだアスタの糾弾に対する応え。
ジェノスの城下町との関係性を、一手に担ってきたスン家。
城下町の人間からは、「人として扱われなかった」スン家。
城の人間からの、負のエネルギーを一手に引き受けていたということをあらわすセリフ。
スン家の内側にいる一部の人間こそが、もっとも強くスン家の滅びを望んでいるのではないだろうか?
アスタのモノローグ。
この「スン家の滅びを望んでいた人間」とは、ヤミル=スンや、テイ=スン、あとは、オウラ=スンやツヴァイ=スンなどのことかと思われます。
スン家の現家長にして族長のズーロ=スンには、5人の子供がいます。
ただし、5人とも母親は別。
ツヴァイの母、オウラ以外の4名は、早くに亡くなるという異常事態。
人がまともに生活する雰囲気が、形成されていなかった証。
そんな生活に嫌気がさし、自ら滅びの道を選ぶ人が出てきても、不思議ではないと感じました。
3.まとめ
読んだことで得られたポイント
シリーズ6巻目は、森辺の民のまとめ役、族長筋の「スン」家にまつわる話。
主人公のアスタが出会った、ルウ家の宿敵、スン家。
そんな彼らは、広大な森辺を治めるために、どんな苦労をしていたのか…
そして、森辺の外の城の人間たちと関わることで、少しずつ蓄積された「毒」とは?
謎多きスン家との全面対決が、今始まる!
やむを得ない戦いに投じられ、それでも抗う異世界人の強さを見ました。
この本は
・異文化に触れたい人
・濃厚な人間模様が読みたい人
・謎深い闇がある小説を読みたい人
におすすめな作品です!
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