『3倍速ドッペルゲンガー』久米絵美里/「『未来という情報』を知った後どうするか?」を考えるきっかけになる!

てつやま
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こんにちは、てつやまです。

このたび、久米絵美里さんのSF&ミステリ小説

『3倍速ドッペルゲンガー』を読みました。

《作品情報》

・書名  3倍速ドッペルゲンガー

・著者  久米絵美里

・出版社 アリス館

・頁数  227

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1.この本のここが凄い!

自分のデータ化された分身=“ドッペルゲンガー”の行動を、3倍速で予測動画として見ることができる「ドッペルアプリ」が身近な近未来。

しかし、巻き戻しも停止も不可能…「ドッペル」と「自分」は、本当に同じなのか?

少年少女が予測不能な“今”と向き合う、SF×ミステリー仕立ての物語!

なぜこの本を読んだのか

『3倍速ドッペルゲンガー』というタイトルが面白そうだったから読んでみました。

また、設定がとても面白いです。

未来では、自分自身を完全にデータ化できるアプリが普及し、そしてそのデータはまるで自分の分身《ドッペルゲンガー》のようにシミュレートすることができることが当たり前の世界。

しかし、そのシミュレートはスキップや巻き戻しはできず、できるのは《3倍速》だけ、という縛りも面白いなと思いました。

2.かんたんあらすじ

「ドッペルアプリ」。それは、自分をスキャンしてデータ化する特別なアプリ。

このアプリを使うと、自分の未来の行動を動画で見ることが可能。

これは そんなアプリを 天気予報感覚で利用する、未来の少年少女たちの物語。

心に響いたフレーズ

未来の確証がないまま、何もしていない時間を過ごすということは、ドッペル再生社会を生きる人間にとって、とても心地の悪いもの。

主人公・荻原明人(メイト)のモノローグ。

ドッペル再生を禁止するグループの一員となった明人。

他のメンバーを見た明人は、「ドッペル再生が当たり前な社会で、あえてそれを使わないようにするのは、とても居心地が悪そうだ」と感じていました。

私には、この感覚は、「これは現代人におけるスマホ」と同じようなものに思えました。

何かわからないことがあれば、スマホで調べる。

行きたい場所ができたら、行き方を調べる。

伝えたいことがあれば、発信する。

現代社会でも、あえてそのようなデジタルから遠ざかる「デジタルデトックス」というものがあります。

「ドッペル禁止」は、「デジタルデトックス」以上の忍耐が必要なことなのかもしれません。

「コンテンツは、『心を豊かにして、個性をはぐくむためにじっくり味わう芸術品』として鑑賞するものではなくなり、『周囲と無難で円滑なコミュニケーションをとるための情報摂取の対象』として、消費されていくようになったのです。」

ドッペル 再生 禁止 グループのメンバーの一人の、鮫島琴子のセリフ。

まさに 現代社会でのタイパ 、タイムパフォーマンスの話につながる考え方と思いました。

次から次へと コンテンツが、雪崩のようにやってくる時代。

一つ一つをじっくり吟味してると、周りの平均的な話題についていけなくなってしまう。

そのことにある種、恐怖を感じているため、情報を摂取を目的としてコンテンツに触れる。

今の時代のスピードは、10年前と比べて ものすごく加速しています。

そのことを 不幸の理由にしないため、コンテンツとの付き合い方を、もう一度見つめ直したいと感じました。

「ドッペル再生がしていることは、未来の提示という『情報の提供』に見えて、実は逆。『余計な情報の削除』です」

鮫島琴子のセリフ。

『情報の提供』に見えて、『余計な情報の削除』

とても分かりやすい表現だと感じました。

ドッペル再生によって、未来の自分の行動がある程度予測可能になったということは、

「情報が増える」という観点よりも、「考慮しなくていい情報を減らしている」という側面の方が大きいという考え方。

例えば、天気予報でも、降水確率が10%ならば、「傘を持って行こうかどうか」と悩むための判断を、それ以上しなくても済む。

ただ一方で怖いのは、余計な情報と認識するものの中に、自らを成長させるものや、幸せにするものを見逃しているリスクも同時に存在するということ。

何事も、1つに依存しないことが肝要なのかもしれないと感じました。

3.まとめ

読んだことで得られたポイント

現代の価値観、タイムパフォーマンス。

いわゆる「タイパ」の是非を突き詰めて考えたようなSF作品。

とある登場人物の一人が、

「失敗をしないためにあらかじめドッペルアプリを使う」と話しているのを読んで、

将来に対する不安、まだ確定していない未来というもののマイナスなイメージがぐるぐる頭の中をめぐると、現代でもそういう考え方になるなと共感を覚えました。

このアプリは、あくまでも道具。

その道具をどのように使うか、その道具とどのように付き合っていくかを考えることが、とても大事なのだろうと感じました。

この本は

・タイムパフォーマンスを求める人

・情報に振り回されるのがしんどい人

・「答え」を求めながらも、答えに縛られるのが苦しい人

におすすめな作品です!

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