
こんにちは、てつやまです。
このたび、高野結史さんのミステリ小説
『奇岩館の殺人』を読みました。
《作品情報》
・書名 奇岩館の殺人
・著者 高野結史
・出版社 宝島社
・頁数 309
1.この本のここが凄い!
ミステリマニアな富豪のための「リアル殺人遊戯」!?
クライアントである探偵役をはやく見つけ出せないと、
自分が「被害者役」として殺されてしまう!?
ノンストップ一気読み必死ミステリー!!
このミステリ小説の設定が素晴らしいと感じました。
ミステリマニアなら一度は夢見る
「殺人事件を解決する探偵になりたい」
を、現実にあり得そうな状況に落とし込み、それを受注する裏社会の会社の実情まで細かく設定。
ミステリマニアに刺さるミステリ小説!
なぜこの本を読んだのか
「孤島」
「洋館」
「推理ゲーム」
という面白そうな単語が並んでいて興味がひかれたため読んでみました。
さらに、「実際に殺人が行われる推理ゲーム」の中で、被害者とならないために、
「”探偵役”を探し出す」という設定が、非常に面白いと感じました。
2.かんたんあらすじ
怪しげな高額報酬バイトに誘われ、とある孤島へ訪れた日雇い労働者・佐藤(仮)たち。
到着後、次々に襲いかかる殺人。
実はこれ、富豪クライアントをもてなす「リアル殺人推理ゲーム」だった!?
次の犠牲者にならないため、佐藤は必死に、
クライアント=”探偵役”を探しだそうとするのだが…
心に響いたフレーズ
このままでは殺される。止められるのは”探偵”のみ。しかし、”探偵”が見つかったとしても説得するのは非常に厳しい。
主人公・日雇い労働者【佐藤】のモノローグ。絶望的な状況を端的に表しています。
怪しい高額バイトで孤島に訪れ、殺人事件が次々発生。
バイトの条件として、
・「なるべく周囲と交流しない」
・「バイトとして参加していることを明かさない」
・「何が起きても役割を続ける」
というものがあります。
そのせいで、殺人という非日常でも、役割を辞められないジレンマ。
「周囲に影響されやすい日本人の若者」を、リアルに描いているなと感じました。
しかし、この連続殺人が、富豪のためのリアル殺人「探偵遊戯」だと知ったとき、状況は一変。
「ここから出してくれ!」と叫びたいのを必死で我慢する主人公・佐藤(仮)。
この「探偵遊戯」のからくりに気づき、物語を壊そうとすれば、
たちまち運営側から消されてしまう恐れがあるからです。
つまり、【佐藤】には、運営側よりも発言権が強い、
「探偵遊戯」のクライアントである”探偵役”を見つけ出し、
このゲームを終わらせてもらうよう懇願する必要がありました。
自身が探偵役を全うして犯人を暴いても、このゲームは終わらない。
なぜなら、真実よりもあくまで「クライアントの満足感」が優先されるためです。
もし暴こうものなら、クライアントの逆鱗に触れ、殺されてしまうかもしれません。
また、運営側自体が、自主的にストーリーを破壊する佐藤(仮)を亡き者にしてしまう危険性も…
犯人を自ら当ててはいけない。とはいえ、探偵役を見つけても、ゲームを止めてもらえる保証はない
下手な動きは、命を危険な状態にさらす。しかし、このままだと、次の犠牲者になりかねない…
以上のことより、私は、よく見受けられる「犯人当てデスゲーム」より、
さらに絶望的な状況だと感じました。
3.まとめ
読んだことで得られたポイント
主人公である【佐藤】側だけでなく、運営側のドタバタ劇まで同時進行するハチャメチャな展開が、凄惨さを中和して楽しめました。
これまでにも、複数視点で進むミステリ小説は数多くありましたが、
ミステリーを「生み出す側」と「抗う側」の視点が描かれているのは
本書の特徴の一つで、とても新鮮でした。
心躍るような没入型ミステリーの魅力を存分に体感することができました!
この本は
・クローズドサークルが好みな人
・一風変わったミステリ小説が好きな人
・ハラハラドキドキしたい人
におすすめな作品です!
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